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神戸地方裁判所尼崎支部 昭和44年(ワ)348号 判決

主文

被告は原告に対し、別紙目録記載(一)、(二)の土地・家屋につき、同目録記載(三)の各仮登記の抹消登記手続をせよ。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

第一  求めた裁判

一  原告

主文同旨の判決。

二  被告

(一)  原告の請求を棄却する、

(二)  訴訟費用は原告の負担とする、

右判決。

第二  請求の原因

一  別紙目録記載(一)、(二)の土地・家屋(以下、本件土地家屋と呼ぶ)は、もと訴外荒木繁夫の所有であつた。

右物件に対し、いわゆる任意競売手続(当庁昭和四〇年(ケ)第四三号)が開始されたため、原告は、昭和四三年一一月二二日これらを競落し、同月二九日その許可決定を受け、まもなく代金を完済して所有権を取得した上、同年一二月二〇日右競落による所有権移転登記を経由した。

二  原告は、昭和四四年三月末頃、訴外荒木繁夫から右競落物件の引渡を受け、現にこれを占有中である。

三  ところが、右各物件の登記簿には、いずれも被告を権利者とする別紙目録(三)記載の各仮登記(以下、本件仮登記と呼ぶ)が存在し、原告の所有権をそれぞれ害している。なお、これら仮登記された賃借権が未だ対抗要件を備えていないことはいうまでもない。

よつて、原告は、各所有権にもとづき、前記各仮登記の抹消登記手続を求める。

第三  答弁

一  原告主張の請求原因事実中

(一)  請求原因一の事実は認める、

(二)  同二の事実は不知、

(三)  同三の事実中、被告を権利者とする原告主張どおりの各仮登記を経由していることは認めるが、その余の主張事実は否認する。

二  被告は、訴外荒木繁夫に対し、貸金債権一〇〇万円を有し、その担保として本件土地家屋に根抵当権(昭和四一年一二月二〇日付根抵当権設定契約)を取得した後、もし同訴外人が右債務を弁済しない場合は、被告が同物件に対し各賃借権を当然に取得する旨のいわゆる停止条件付賃貸借契約を締結した。

三  ところが、原告主張のとおり右抵当物件はいずれも原告に競落され、昭和四三年一一月二九日にいたり訴外荒木の被告に対する債務一〇〇万円の不履行が確定した。したがつて、被告は、右停止条件の成就により前記土地家屋に対する各賃借権を取得した。

四  右賃借権を保全した本件仮登記は、民訴七〇〇条一項第二により抹消さるべきものでは決してない。

したがつて、被告は、右賃借権にもとづき、原告に対し、本件土地家屋の引渡しを求める権利があり、その引渡しを受けた後は、これを三年間使用収益する権利がある。

なお、右賃貸借は、その期間が法定更新されており、今なお有効に継続するものである。

第四  原告の反論

被告も自認するとおり本件仮登記よりも先順位として、被告主張の根抵当権設定登記がなされていたところ、原告の前記競落によりこの根抵当権も消滅し同登記も民訴七〇〇条により抹消された。本件仮登記も同法条により抹消さるべきものであつたこと疑いはない。

なお、競落後すでに三年以上を経過した現時点でみる限り、右根抵当権におくれるすべての登記が抹消さるべきは当然である。

(別紙)

目録

(一) 土地

西宮市上大市二丁目一二二番一三

宅地 六五・二二平方メートル

(二) 家屋

右同所

家屋番号一二二番一三

木造瓦亜鉛メツキ鋼板交葺二階建居宅

一階 三八・〇四平方メートル

二階 三三・七四平方メートル

(三) 登記

神戸地方法務局西宮出張所昭和四二年二月一日受付第二九五〇号、賃借権設定仮登記、原因昭和四一年一二月二〇日停止条件付賃貸借契約(条件・昭和四一年一二月二〇日根抵当権設定契約による債務金一〇〇万円を弁済しないときは賃借権が発生する)、存続期間三年、特約・譲渡転貸ができる、権利者被告会社。

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